この時代の婚姻制度

源氏物語は光源氏が多数の女君を相手に繰り広げる恋愛ドラマです。妻がありながら次から次へと様々な女君に迫りゆく光源氏。およそ今の時代とはかけ離れた有様にこんな馬鹿げた話には付き合えないと遠ざかってしまう人も多い筈です。

そこで源氏物語入門書では大抵第一章で「この時代は一夫多妻制であり、皇族・貴族は多くの妻を同時に持つことが許された」などの説明がなされているものです。「そうか、やはり時代が違うんだ、許されるんだ、いいなぁ、、」なんてことで納得してしまうのが一般的でしょうか。私もそう思っていました。

ところがもう少し厳密に考えるとそうではないようです。この時代の婚姻制度は一夫一妻制であったと言うのです。

「源氏物語の結婚」平安朝の婚姻制度と恋愛譚(工藤重矩・中公新書)

最近出た本です。源氏物語の筋からして説得力あるなあと思いました。

ポイントは、結婚成立の条件は律令で決められており法的に妻と認められるのは一人のみ。正式な結婚は親(又は親代わり)が認めるもので、三日間続けて夫が妻のもとに通い三日夜の餅で世間に結婚を披露して(露顕=ところあらわし)初めて正式な夫婦になるというもの。
上記以外は正妻ではなく愛人・愛妾にとどまり妻としての立場、社会的待遇等において差があった由。

これからすると光源氏の正妻は葵の上のみ。葵の上が亡くなった時が次の正妻を迎えるチャンスで、六条御息所でも朝顔でも朧月夜でも、ウルトラCとしては桐壷帝の死後なら藤壷でも正妻にできる可能性があった。でも作者はそうはせず、紫の上を第一の女性として(紫の上は正妻にはなりえない)光源氏栄光の道への伴侶とするのです。

そして第二部はG40年2月、14才の女三の宮が正妻として降嫁してくるところから始まる。そりゃあ何も起こらない筈がないってことであります。

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この時代の婚姻制度 への4件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    通い婚の時代でも基本的には一夫一妻制度なのですね。意外でした。
    法律も戸籍もない時代のこと、三日夜の餅が公へのお披露目と言うこと?

    男性はいつでも年齢差なんて関係なく見染めた女性の元に通えたのですね。
    自由でいいな~
    殿方の皆さん、羨ましいでしょう?
    でも女性の立場からすればすごい複雑な心境ですよね。
    この辺の女性心理が源氏ではどのように表現されているか興味あります。
    江戸時代でも正室は一人、後は側室、いわゆる大奥物語。

    女三の宮とは26歳差ですか?近頃では芸能界によくある話題です。
    先週の大河、清盛では滋子、個性的で魅力的でした。
    ちゃんと意志があって主張できる女性、好きですね。
    源氏にもそんな女性出てくれば素敵です。

    • 清々爺 のコメント:

      コメントありがとうございます。

      この時代法律も戸籍もなかったわけではありません。飛鳥時代を経て701年の大宝律令の時には婚姻法も戸籍も厳しく決められていたようです。尤もこれらの法令は民を支配するためのものでしょうから、一握りの貴族にどこまで及んでいたのかは別かも知れませんが。

      ただちゃんとした男女の仲になるには(必ずしも正妻になるわけでなくても)3日間は続けてなすべきことをなし、3日目に餅を食べて祝い、周囲にお披露目をするというのが必須だったようで、源氏物語ではこの3日連続を巡り色々なトラブルが出てくるのです。

      さて、正妻・愛人・愛妾などあって一男多女であるにせよ、個別に突き詰めれば一対一の関係であり、男がどう対処するのかそしてそれに対し女がどう対応するのか、、、この辺の心理ドラマこそが醍醐味であります、、乞うご期待。。

  2. 青玉 のコメント:

    そう言えば中学生の時、大宝律令(701)勉強しました。
    内容は覚えていませんが(律令)ですから法律があったということになりますね。
    源氏では歴史の勉強まで復習できるというメリットがあります。
    歴史と文学両方の面から踏み込んでいければいいですね。

    明日27日、編纂1300年記念 「古事記を読む」として佑之氏が名古屋で講座を持たれます。
    ちょうど平家と同じカルチャーセンターなので午前、平家 午後、古事記を受講します。
    名古屋には古事記の写本1万5000点ほどの資料が存在するそうです。

  3. 清々爺 のコメント:

    なかなかいいカルチャーセンターですね。

    08年が源氏物語千年紀、10年が平城京遷都1300年そして今年が古事記編纂1300年記念の年ですか、、もうこの年になると新しきものより古きを訪ねるのがいいですよね。。

    美杉村出身の佑之氏の講演ですか、いいですね。古事記学者の彼に是非古事記~古代文学~源氏物語への流れを語って欲しいなと思ってるものです。。

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