梅枝(6・7・8) 書道論・仮名論

p205 – 214
ここからしばらく書道・仮名に関する論述が続きます。興味深いところです。

6.源氏、当代の女性の仮名を論評する
 〈p273 源氏の君は、「万事につけて、〉
  
 ①姫君の嫁入り準備で草子の話になり紫の上を相手に書・仮名のことを語り合う。

 ②源氏 よろづのこと、昔には劣りざまに、浅くなりゆく世の末なれど、仮名のみなん今の世はいと際なくなりたる。
  →源氏は(源氏物語は)尚古趣味であるが仮名だけは当代の方がいいとする。
  →三蹟(道風・佐理・行成)
  「和様の書」[野分(3・4)野分の過ぎた朝 源氏と紫の上] コメント欄参照

 女君たちの仮名についての源氏の論評
 ③六条御息所 - 際ことにおぼえしはや
  秋好中宮 - こまかにをかしげなれど、かどや後れたらん
  藤壷 - なまめきたる筋はありしかど、弱きところありて、にほひぞ少なかりし
  朧月夜 - 今の世の上手におはすれど、あまりそぼれて癖ぞ添ひためる
  前斎院(朝顔)と紫の上は論評なし。
  →総じて当代では朧月夜・朝顔・紫の上が上手としている。
  →論評は正に「書は人柄を表す」ということだろうか(特に朧月夜)。

 ④兵部卿宮始め当代の書き手や若き公達(夕霧・柏木)に草子を書かせる。源氏も書く。
  →貴重品の紙&墨・筆ともに極上のものを選んで。

7.源氏、草子を書く 兵部卿宮、草子を持参
 〈p276 前の香競べの時のように、〉

 ①源氏自ら草子を書く。
  →愛する姫君のため。選りすぐりの歌を選んで心を込めて書いたのだろう。
  →源氏が女手(平仮名)も書く。この頃には男も平仮名を書くようになっていた証し。

 ②筆のしりくはへて
  →リラックスした様子、面白い表現。

 ③兵部卿宮が登場(頼まれた草子を渡しに来る)
  →風流事となると必ず登場する。

8.源氏をはじめ、人々の仮名を論評する
 〈p277 その場で早速御覧になりますと、〉

 ①兵部卿宮 - 格別の上手ではないが風流人らしくあかぬけている。
  源氏 - おほどかなる女手の、うるはしう心とどめて書きたまへる、たとふべき方なし
  →しどろもどろに =メチャクチャという意味ではない。

 ②左衛門督 - 勿体ぶってるがあか抜けていない。
  女君たち - 兵部卿宮に見せない。朝顔のは取り出しもしない(源氏だけの秘密)。
  
 ③宰相中将(夕霧) -絵も書もすばらしく美しい

 ④難波の葦=歌枕 百人一首に二首採られている。
  No.19 難波潟短き葦のふしのまもあはでこの世をすぐしてよとや 伊勢
  No.88 難波江の葦のかりねの一夜ゆゑみをつくしては恋わたるべき 皇嘉門院別当

公家や将軍・大名家も大事な姫君のお輿入れにはこのようにして草子・巻物を用意して持たせたのだろう。そしてその筆頭が源氏物語だったのではなかろうか。

 

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梅枝(6・7・8) 書道論・仮名論 への2件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    この場面だけでも成り立つ興味深い所でした。
    三蹟、昔から特筆だった物には三の文字で現わすことが多いですね。
    三聖 三夕しかり。又、三景とか三名人、三悪人とか?

    女君たちへの論評がそれぞれに個性を現わしていて面白いです、
    仮名文字は見た所簡単で書き易そうに見えますがこれも奥が深くつくづく難しいものだと思います。
    成り立ちは漢字が基本なので元の漢字をしっかり頭に入れ要所要所抑えないと美しい文字が書けません。
    下手に崩すと気品がなくなりますし。

    口惜しからぬかぎりさぶらふ。
    女房の人選がいかに重要か、以前式部さんが触れられましたがこの場においてもやはりそれ相応に見識のある女房をお傍に置かれているのが解りますね。

    見たまふ人の涙さへ水茎に流れそふ心地して~・・・筆にまかせて乱れ書きたまへる、見どころ限りなし。
    その素晴らしさがうかがえる所です。

    今の時代には想像もできない公家社会を知らしめる場面です。
    ついうっかり姫君の御輿入れを失念する所でした。
    後の大名家の姫君にはこの源氏物語の写本を用意されたのですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.書道をなさってる人には興味が尽きないところでしょう。平仮名は難しいのでしょうね。基本+創意、、、コメントいただき奥深いことがよく分かります。

      2.源氏のお相手をする女房たちの質の高さ、これは抜群だったのでしょうね。アシスタントであり相談相手であり時にはアドバイザー。そして勿論秘書でありマネージャーでも。まあ得意分野で分担していたのでしょうが。素晴らしい知的サロンです。

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