若菜上(29・30・31) 入道の願文に対する明石一族の反応

p166 – 175
29.明石の君と尼君、悲喜交々の運命に泣く
 〈p122 明石の君は、明石の女御のいらっしゃる〉

 ①入道からの手紙を見ての明石の君と尼君
  →二人は入道の行動を予想はしてたのであろうがやはりショックだったろう。
  →二人して涙にくれる。姫君の入内・懐妊・出産と忙しく入道のことを思い出す暇もなかったであろうに、鬼気に迫る長文の最後の手紙を見ては冷静ではおれない。

 ②明石の君 「ひが心にてわが身をさしもあるまじきさまにあくがらしたまふ、と中ごろ思ひただよはれしことは、かくはかなき夢に頼みをかけて、心高くものしたまふなりけり」 
  →明石の君も入道の願文の経緯詳細までは知らなかったのか。ここで初めて全てを知る。

 ③尼君、久しくためらひて、
  →すぐには言葉が出て来ない。尤もであろう。
  
  明石の尼君の述懐。
  →非常にまともで切々と心の内を吐露している。
  →入道という偏屈者を夫に持った妻
  →入道共々出家して世を捨てた自分がまた京に上り今や国母の母君になろうとしている。

   尼になって京に戻るはめになった歌が思い出される。
   身をかへてひとりかへれる山里に聞きしに似たる松風ぞ吹く(松風)
  →この尼君の一生も波乱万丈である。
     
 ④明石の女御&若宮は春の町に居て尼君は会えない。
  →この期に及んでは源氏も年老いた尼君に配慮してあげればいいのに。。

30.東宮、明石の女御と若宮の参入を促す
 〈p126 東宮からは明石の女御に〉

 ①東宮15才 明石の女御が里下がりして若宮を産んだ。
  →母子ともに早く内裏に帰って来てほしいと思うのは当然であろう。

 ②明石の女御(今や御息所である!)は帰りたくない。
  →紫の上も明石の君も居る六条院は気楽。緊張を強いられる内裏になど帰りたくない。
  →里帰り出産は今でも同じだろう(ウチもそうです)。

 ③源氏「かやうに面痩せて見えたてまつりたまはむも、なかなかあはれなるべきわざなり」
  →面やつれした顔も魅力がある!?朧月夜の時もそんな表現あったがいかがなものだろう。

31.明石の君、入道の願文を女御に託する
 〈p127 紫の上がお帰りになられた夕暮、〉

 ①明石の君が女御に入道の願文を渡して今までのこと、今後のことにつき諭す。
  むつかしくあやしき跡なれど、これも御覧ぜよ。この御願文は、近き御厨子などに置かせたまひて、かならずさるべきをりに御覧じて、この中のことどもはせさせたまへ。
  
 ②入道の願文の序でに紫の上に感謝するよう改めて言い聞かす。
  対の上の御心、おろかに思ひきこえさせたまふな。
  →実母明石の君の心底からの言葉であろう。

 ③明石の女御は育ちがよく純情可憐。実母にも養母にも素直に応じる。
  →教育の賜物であろう。明石一家のDNAはすごい。

カテゴリー: 若菜上 パーマリンク

若菜上(29・30・31) 入道の願文に対する明石一族の反応 への2件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    明石一族の栄達の陰にあった入道の真意を知り母娘共々に涙する。
    娘、孫の輝かしい栄達を喜びながらも夫入道に思いを寄せる尼君の複雑な心境がが痛わしくも哀れです。
    共に今生の別れを覚悟されたのでしょう。

    女性は出産後の女盛りがもっとも美しいとはよく言われることですが源氏の目からするといつも好色の感なきにしも有らず。
    実の親、育ての親の対応がそれぞれに異なるのにも頷けます。
    現代ならば実家の母親は産後ゆっくり養生させてやりたい、しかし嫁ぎ先の親は早く戻りなさい・・・いずれも母心には違いありませんけれど。
    13歳と言えばまだまだ幼さが残っている年頃。
    東宮のお気持ちは解りますが里心がついても仕方ないでしょう。
    だって子どもが子どもを産んだようなものですもの・・・

    明石の君、この際女御に入道の願文を明かされ来し方行く末のことを託される。
    紫の上への感謝の思いもきちんと伝えられたのはさすがです。
    明石一族、入道を筆頭に三代の女性、素晴らしいです。
    特に女御、年若にも関わらず祖父母、母君への思いに胸を打たれているご様子に感動します。
    いとあはれと思して、御額髪のやうやう濡れゆく御そばめあてになまめかし。
    おっしゃる通りDNAも大きいですがやはり育て方(教育)でしょうね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。女性ならではのコメントだと思います。

      1.この尼君は「幸い人」として崇められ羨ましがられるのですが現代の感覚からすると「不幸な人」ではないかとも思います。夫が世を拗ねた偏屈者。でも愛し合う夫婦であった。その夫とは離れ可愛い孫にも会えない。夫は会えないまま短文の遺書を残し自殺行為的に姿を消す。覚悟していたこととは言えショックだったことでしょう。長文で非常にまともな述懐。おっしゃる通り「痛わしくも哀れ」です。

      2.入道が保管していた願文を明石の君に届けそれを明石の女御に見せる。この場面もいいなあと思います。願文&遺書、入道の筆跡は「むつかしくあやしき跡」で内容は「この文の言葉、いとうたて強く憎げなるさま」だったのでしょうが女御には心打つものであったことでしょう。

      3.入道が入った深山、どのあたりだろうかと地図を見てみました。生野銀山あたりでしょうか。この辺に「明石の入道終焉の地」なんて石碑でもあれば面白いでしょうに(おふざけです)。
       

コメントを残す