御法 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

御法のまとめです。

和歌

80.絶えぬべきみのりながらぞ頼まるる世々にと結ぶ中の契りを
     (紫の上)  紫の上、花散里に名残を惜しむ

81.おくと見るほどぞはかなきともすれば風にみだるる萩のうは露
     (紫の上)  紫の上、最後の絶唱

名場面

81.この対の前なる紅梅と桜とは、花のをりをりに心とどめてもて遊びたまへ
     (p250  紫の上、匂宮に遺言)

82.まことに消えゆく露の心地して、、、明けはつるほどに消えはてたまひぬ
     (p256  紫の上死去)

[御法を終えてのブログ作成者の感想]

御法を終えました。源氏物語最大のヒロイン紫の上がついに亡くなる、誠に悲しい帖でした。

昨日青玉さんにコメント頂いた通り紫の上は「永遠の少女」(常処女)だと思います。10才で源氏に連れ去られ、以来源氏の意のままに教育され、何事も素直に受け入れ決して反抗することなく自分を抑え他人(源氏・明石の君・明石の中宮・女三の宮)によかれと生きてきた人生。そしてついには心労が昂じて死んでしまう。
 →こんな人生でよかったのか。紫の上はどう生きるべきであったのか議論は色々あると思います。

記憶に新しい所ですが夕霧21.p179-180で紫の上自身が女性論を述べています。自分の人生を振り返り一切自己を主張することのなかった自分の生き方に疑問を呈しています。これを聞いて私は紫の上に強烈な人間性を感じました。
 →紫の上の生き方に対して明石の君の生き方・女三の宮の生き方も考えてみたい所です。

紫の上は物語中で23の歌を詠んでいます。その殆どが哀しいもので心からの喜びを詠ったものは皆無だと思います。いくつか挙げておきますと、

 かこつべきゆゑを知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらむ(初出@若紫)
 惜しからぬ命にかへて目の前の別れをしばしとどめてしがな(須磨への別れ@須磨)
 こほりとぢ石間の水はゆきなやみ空すむ月のかげぞながるる(朝顔出現冷えゆく心@朝顔)
 目に近くうつれば変はる世の中を行く末遠く頼みけるかな(女三の宮降嫁@若菜上)
 おくと見るほどぞはかなきともすれば風に乱るる萩のうは露(死に臨んでの絶唱@御法)

もう一つ本帖では「出家」についてのコメントで盛り上がりました。ありがとうございます。実際のところ今ひとつよく分からないのですが、「源氏物語は出家の文学である」とも言われているし、引き続き宇治十帖でも主要テーマとなっています。更に考えていきたいと思います。

2月の予定は下記通りです。寒さはまだ続きますが頑張って読み進めましょう。
[2月の予定]
  幻 5回(2/3-7) & 総括(2/10)
  雲隠 1回(2/11)
  匂兵部卿 2回(2/12-13) & 総括(2/14)
  紅梅   2回(2/17-18) & 総括(2/19)
  竹河   6回(2/20-27) & 総括(2/28) 
 

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御法 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括 への8件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    御法、短いけど重い内容で忘れられない巻です。

    特に紫の上の一生は読者にも様々考えさせられるものがあります。
    果たして紫の上は幸せな人生だったのでしょうか?
    死ぬ間際に悔いのない生き方だったと思えたでしょうか?私にはそうは思えません。
    傍目には華やかで幸せそう、源氏一番の女性でしたが本人はどうだったでしょう。
    その生涯を振り返れば清々爺さんも指摘された夕霧21にもありますように女性の生き方について自ら問いかけています。
    その日のコメントでも触れましたが紫式部が紫の上を通して女性論を言わしめた箇所はこの時代の女性として画期的ですね。
    女性観に疑問を投げかけているのが他の女性とは異なるところで紫の上の本質に触れる思いです。
    恐らく彼女はこの時代に息苦しい思いを抱いていたと思います。
    考えれば考えるほど紫の上が哀れでなりません。

    常処女よ、やすらかに。
    今度生まれ変わる時は我々の世界へようこそ・・・
    まあ今の世も生きづらいことに変わりはありませんが貴女の様な女性ならさぞかし魅力的で持てる能力を存分に発揮できることでしょう。
    生涯忘れ得ぬ「紫の上」です。
    又どこかでお会いしたい女性のナンバーワンです。

    余韻が強すぎて気持ちを引きずりそうですが来月の「幻」これも期待しています。
    よろしくお願いいたします。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      紫の上について熱く語っていただきました。誠にその通りだと思います。
      いつの時代にも盲目的な愛に生き死んでいく女性はいます。戦前・戦中・戦後の日本ではむしろそれが当たり前だったと思います。自分の生き方に疑問をはさむことなく、親のため夫のため子どものために馬車馬のように働き、束の間の喜びを見出す間もなく生を終える。そんな生き方に男も女も社会も皆疑問を持たなかった、、、考えてみれば未熟な社会だったと思います。今はぐっとよくなりました。世の中変わりました。団塊の世代が日本史に貢献した最大のものだと思っています。

      紫の上は晩年幸福感を持ってなかったと思います。それは唯一最大のパートナー源氏への信頼感(愛)を失くしていたから。仮面をかぶり良妻賢母を装う、、、むしろ辛かったのではないでしょうか。

      (私は紫の上が好きです。そして私ならあんな不幸な目には合わせません(他の女性に気を移すことはしませんから))

  2. 式部 のコメント:

      紫のものがたりはこの帖で終を迎え、読者としては深い哀しみと寂しさが残ります。
     紫の上を通して、人の一生とは何かと考えさせられます。
     現代の我々ですらそうなのですから、同時代を生きた人々(貴族)にとって、心にせまるものがあったでしょうね。
     紫の上はこの物語のように生きることが周囲の人間にとって一番良かった、だからすべて丸く収まりうまくいった、けれどねえ・・・   紫の上自身の心の問題がねえ・・
     大きな声も出せず、嫌なことを嫌といえず、外出もほとんどできず、活発に動くこともままならない、私は考えただけで苦しいです。我慢できない苦しさです。
     心の救いをもとめ仏教に帰依しようと考えたのでしょうね。
     源氏がもっと紫の上の真の心の中を見ることができたらよかったのにね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      自主自立をモットーとする式部さんには一日でも耐えられなかったでしょうね。というよりそもそも源氏の言うなりに育てられたなんてことはないでしょうから、女三の宮の所に源氏を送り出し独りで苦しむってこともあり得ないですからねぇ。

      六条御息所も藤壷も苦しんだでしょうがやはり紫の上の心の苦しみが一番ではなかったでしょうか。

      紫の上は10才で二条院に引き取られ27才で六条院に移り40才で発病してからは二条院と六条院に交互に住んでいたのでしょうか。その間外出が描かれているのは、
        ①源氏について葵祭見物に (葵)
        ②明石の姫君について参内 (藤裏葉)
        ③源氏40の賀で嵯峨野御堂で薬師仏供養 (若菜上)
        ④住吉神社への願ほどきに同行 (若菜下)

      くらいのものでしょうか。全く「籠の鳥」とはこのことで式部さんならずとも息苦しくなってきます。私たちいい時代に生きています。ますます自由を謳歌しましょう。

  3. ハッチー のコメント:

    皆さんの紫の上に対する思いを聞かせていただき、改め考えさせられました。常処女、初めて知りましたが、良い言葉です。皆さんの仰る通りだと思います。彼女が生きた、時代・身分・伴侶を考えると、今とは違い特に人生後半は自分を抑え込んだ人生で、死を迎えて最後に幸せだったと振り返れなかった、時代が違っていればと、あわれを感じます。

    源氏物語で、理想的な女性は小生も紫の上と思います。一方、理想とすべき男性は源氏でしょうか、紫式部はどう言う気持ちで描いたのか、小生には源氏は理想ではないゆえ、上手く評価できません。

    また、今回皆さんの間で出家論議も盛んで、色々教えていただきました。お正月に放映された瀬戸内寂聴のちょっと安っぽいトーク番組を先週見た(録画)のですが、彼女は50才で出家して戒律として?守るべきことはほとんど守り切れていないが、男だけは完全に絶ったと言っていました。
    清々爺の聞いてみたいと言う、寂聴ならどう考えるかのヒントになるかもしれません。
    小生も関心が深いので、出家に関する皆さんの議論を抜粋で恐縮ですが、後学のため改め整理させていただきました。

    式部さんは、
    ”出家すれば婚姻関係が解消されるということがこの物語のポイントの一つだと思います。来世を願う気持ちも勿論あるでしょうが、諸々のわずらわしい男女関係から逃れる方法として特に女性には出家願望があったのかもしれません。男性の出家願望とは少し違う要素があるように感じます。”
    と書かれています。
    続いて、青玉さんは
    ”昨日の「出家」について
    出家が婚姻関係においてどのように扱われたのか例の「源氏物語の結婚」の本からは以下のようにありました。
    出家にはいくつかの異なった様態があり婚姻との関係もそれにしたがって差がある。
    出家して僧籍に入る本格的な出家の場合は俗人として本籍を離れる定めでおのずから離婚となりその場合特に問題ないがはっきりしないのが在家で戒を受ける場合である。
    出産や病気平癒のための戒など日常生活に影響しない事例もあり夫婦の関係が絶えたことをうかがわせる事例もあると言うことで過去の天皇家や摂関家の実例が引かれていました。
    例えば源氏物語中の女三宮の場合ですが源氏の承諾を得ぬままに朱雀院が出家させたのは単に世間をごまかすための手段であり目的は源氏と引き離すことで婚主の判断が重く婚姻関係が解消されたと見なしてよいであろうとの事です。”
    と書かれています。
    清々爺は
    ”式部さん推奨の明星大学三橋准教授のネットによると、出家には:

      生前出家 仏道修行すべく俗縁を捨てる所謂出家
      臨終出家 死の直前あの世で優遇されるため急遽行う出家
      死後出家 死後葬式の際戒名をもらってする出家(現在皆やっていることか)

     この三種類があるとのこと。生前出家のあり方については依然疑問が残りますが、臨終出家・死後出家は面白いですね。戒名ってそういうもんなんですかね”
    とありました。

    歌では、衆目の一致、

    おくと見るほどぞはかなきともすれば風にみだるる萩のうは露

    ですね。

    いよいよ、幻、これで光源氏が登場しなくなるとは、さびしい気もしますが、宇治十帖も楽しみです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.理想の女性は紫の上、そうですよねぇ。でも理想と現実は違うので理想をおし進めると幸せになれない。難しいものです。一方源氏は人を越えた男(スーパーマン)として描かれている。いい所・悪い所・かっこいい所・無様な所、全てを具有している男という位置づけではないかと思います。

      2.出家の諸説、まとめていただきありがとうございます。
       守らなくてもいい戒律があるなんてよく分かりませんねぇ。宗教たるものイスラム教でもキリスト教でも厳格に教えを守る信者とそうでもないいい加減な信者がいる。仏教の出家も同じようなものでしょうか。そんな中、寂聴さんでもないですが「性的関係を絶つ」これだけは絶対な感じがします。逆にいうと「色々あった性的関係を絶つ」それが出家の目的という場合が多かったように思います。

      源氏物語の女君の出家を考えてみました。

       ①藤壷  = 源氏との性的関係を絶つため(賢木)
       ② 六条御息所 = 重病になり臨終出家(澪標)
       ③ 空蝉 = (継子)河内守から(源氏からも)逃げるため(関屋)
       ⑤朝顔 = 詳しく書かれてないが源氏を疎んでか(若菜下)
       ⑥朧月夜 = 源氏との性的関係を絶つため(若菜下)
       ⑦女三の宮 = 源氏との性的関係を絶つため(柏木)
       ⑧ 紫の上 = 臨終或いは死後出家(御法)
       そして宇治十帖の浮舟です。

      一つの面を強調し過ぎかもしれませんが、人間生きていく上で男女の性的関係がいかに大きな要素を占めるか(性の歓びと煩わしさは紙一重)ということだと思います。
       

  4. 進乃君 のコメント:

    紫の上が逝去.
    その多述、周りの人々の騒々しいまでの悲しみ等にも拘らず、
    この帖の全体の印象はとても静かです。
    逆に若紫の頃の溌剌としたイメージが最後まで残り、
    悲嘆という印象は感じませんでした。

    PS ハッチーさんの出家論は 面白かったですね。
      そもそも出家と言う行為をここまで深く(?)考えたことは
      今までなかったので感心すること頻りです。

    源氏の影が薄くなってきました。いよいよ みたいですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      御法終わりましたか。着実に進んでいますね。素晴らしい。こういう風に時間差でコメントいただくのも昔(2ヶ月前ですが)を振り返るのにありがたいです。

      御法、紫の上のことを思い出すためだけの帖と言って過言でないでしょう。そしておっしゃるように静かな印象だったと思います。紫の上、あの北山でみつけたかぐや姫が天に召されるまでの一生。読者には色んな思いをもたらしてくれました。他人のために生きた一生、現代感覚からすると違和感はありますがトコトン他人(夫・家族)に尽し抜いた一生(マゾ的かもしれないがそれで満足を感じていた一生)、これも不幸せだったとは言い切れないのではないでしょうか。

      出家に関する議論いいですよねぇ。是非これにも参加してくださいよ。

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