宿木(23・24) 薫、二条院で中の君に迫る  

p136-148
23.中の君宇治への同行を願う 薫中の君に迫る
 〈p106 中の君は、匂宮の冷たいお仕打ちの恨めしさなどは、〉

①中の君 山里にあからさまに渡したまへと思しく、いとねんごろに思ひてのたまふ。
  →中の君は純粋に宇治に帰ってみたいと思っていただけだろう。

 ②薫「それはしも。心ひとつにまかせては、え仕うまつるまじきことにはべなり」
  →それは当然。匂宮に黙って隠れて行くことはできない。
  →こんな相談を持ちかけられれば薫が中の君は自分を当てにしている。脈ありと考えるのは当然。

 ③いみじくらうたげなるかなと、常よりも昔思ひ出でらるるに、えつつみあへで、寄りゐたまへる柱のもとの簾の下より、やをらおよびて御袖をとらへつ。 名場面
  →人妻に対してそれはない。またもや薫の中途半端な行動である。

 ④中の君「思ひの外なりける御心のほどかな。人の思ふらんことよ。あさまし」
  →中の君は薫は後見はしてくれるが自分には手出しはしないと高を括っていたのだろうか。それにしても「スキあり」と言わざるを得まい。
  
 ⑤中の君の宇治に行きたいとのリクエスト、薫として叶えてやる術はなかったのか。
  匂宮を説得しての正面突破もあり得たのでは。
  二条院に一旦入ったが最後出るに出られぬ籠の鳥。中の君も可哀そうである。

 ⑥遠慮して座をはずす女房たち それでも薫は自制してしまう。
  昔だにありがたかりし御心の用意なれば、なほいと思ひのままにももてなしきこえたまはざりける。
  →薫はトコトン逆上しない男ですねぇ。まあこの場面は自制するのが普通でしょうが。

24.薫、中の君への恋情に苦悩する
 〈p110 まだ宵のつもりでいたのに、〉

 ①薫 いと恥づかしと思したりつる腰のしるしに、多くは心苦しくおぼえてやみぬるかな、
  →腹帯(当時は中でなく衣服の外に締めていたらしい、どのようにかよく分かりませんが)を見て薫はびっくりし、「こりゃあいかんな」と逸る心も萎えたのではないか。

 ②さらに見ではえあるまじくおぼえたまふも、かへすがへすあやにくなる心なりや。
  →それでも中の君の可愛らしい様子を思い浮かべると恋心を断ちきることはできない。

 ③薫 いたづらに分けつる道の露しげみむかしおぼゆる秋の空かな
  →空しく過ごした宇治の一夜。今さらいってもねぇ。

 ④すこし世の中をも知りたまへるけにや、さばかりあさましくわりなしとは思ひたまへりつるものから、、、、さすがになつかしく言ひこしらへなどして、出だしたまへる
  →薫より中の君の方が人間的にも上に立っている。

 ⑤けしかならぬ心なるや。さばかり心深げにさかしがりたまへど、男といふものの心憂かりけることよ。
  →所詮男たるものは情けないもの。紫式部の喝破である。

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宿木(23・24) 薫、二条院で中の君に迫る   への4件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    やはり少しの心の弱さと油断が薫のこのような無体な行動を誘うことになるのでしょう。
    かろうじて自制したものの心の炎は静まるとは思えません。

    この時代今の我々が自由に里帰りするようなわけにはいかないのですね。
    私など匂宮に思い出の宇治へ行きたいと頼めばいいのにと単純に考えてしまいますがそうはいかないのがこの世界なのでしょう。

    薫、腹帯を目にして驚愕の思いだったでしょう。
    腹帯が効果的に使われていますね。
    これをみて驚かない者はいないでしょう。
    肌に直接巻くものですが直接目に触れるとはどのような巻き方なのでしょう?

    薫の恋患いがまたまた延々と繰り返される、どうしたことでしょう?
    いっそ、昔の物語の男のように女をさらって逃げたら如何?
    薫にはそんな勇気もきっとないでしょう。
    いやはやどうしようもない困った男ですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      腹帯は当時身体の外に締めていたとどこかで読んで疑問に思いましたが腹帯の締め方に興味を持つのも変な話で、、、やめました。腹帯を締める儀式があったようなのでその時は見えるようにしたのかもしれませんが実用としては肌につけなくては意味がありませんものねぇ。

      この時はやはり肌に直接つけておりそれが目に入るまで衣服を剥がし手でも触れた、、、ととるのが自然なのでしょうか。

      明日の第25段に 「御腹もすこしふくらかになりにたるに、かの恥ぢたまふしるしの帯のひき結はれたるほどなどいとあはれに」 とあり、この腹帯の描写を大野晋は「源氏物語としてはきわめて異様な、それこそエロティックな露わな描写ですね。ふつう、こういうこと、この作者は趣味として書かないんですよ」と言っています。

      腹帯を小道具に使って薫と中の君の際どい場面をうまく描いているものと思います。読者はそれぞれに想像をたくましくして(時には顔を見合わせながら)読み進めたのではないでしょうか。

  2. 式部 のコメント:

     今日、お芝居(お染の七役)を観に行っておりましたが、ちょうどその中のセリフに「五か月の腹帯」という言い方があり、そのあとお染が屏風の奥から姿を現すのですが、着物の上に長めの衱のようなものを巻き(舞台ではピンク色)、前で結んで垂らしていました。昔は外側に巻いたものだったのでしょうかね?
     単なる舞台上の効果だけをねらったものではないように感じました。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。お芝居、いいですねぇ。

      やはり目で確かめると実感が湧きますね。外側に巻いたのかもしれませんね。洋服の今と十二単の当時とは違い過ぎてマタニティアイテムがどうなってたのか想像つきません(今のこともロクに知りませんが)。源氏物語のおかげで色んなことが考えられて面白いです。

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