蜻蛉(8) 薫、中将の君に手紙

p70-77
8.薫、中将の君を弔問、遺族の後援を約束す
 〈p178 あの母君は、京の家で出産する予定になっている娘のために、〉

 ①かの母君は、京に子産むべきむすめのことによりつつしみ騒げば、例の家にもえ行かず、すずろなる旅居のみして、思ひ慰むをりもなきに、
  →中将の君は常陸介邸には戻れず三条の隠れ家(薫が浮舟を尋ねてきた家)にいる。

 ②薫は中将の君に仲信を使いとして遣わす。
  →この辺、相変わらず薫は小まめである。

 ③薫「されど、今より後、何ごとにつけても、かならず忘れきこえじ。また、さやうにを人知れず思ひおきたまへ。幼き人どももあなるを、朝廷に仕うまつらむにも、かならず後見思ふべくなむ
  →浮舟を幸せにしてやれなかった。薫は罪滅ぼしの意味合いもあってか援助を約束する。

 ④母は薫に丁重な返事を書く。
  →母は薫に恨み言の一つも言いたかったのではないか。
  →何故もっと親身に浮舟を面倒みてくれなかったのか。浮舟が死んだのは貴方のせいですよ、、、、。まあ言っても仕方ないことですが。

 ⑤母は使者(仲信)に贈物を贈る。薫は「無用のものを、、」と切り捨てる。
  
 ⑥改めて浮舟に対する薫の心内
  、、ただ人、はた、あやしき女、世に古りにたるなどを持ちゐるたぐひ多かり、かの守のむすめなりけりと、人の言ひなさんにも、わがもてなしの、それに穢るべくありそめたらばこそあらめ、、
  →「受領階級の娘であってもいいではないか」初めからそう思ってたならこんなことにはならなかったろうに。今さら思っても遅い。薫の歯切れの悪いところである。

 ⑦中将の君から薫の手紙を見せられた常陸介
  「いとめでたき御幸ひを棄てて亡せたまひにける人かな。おのれも殿人にて参り仕うまつれども、近く召し使ひたまふこともなく、いと気高くおはする殿なり。若き者どものこと仰せられたるは頼もしきことになん
  →純朴な常陸介。受領階級と上流貴族の違いがまざまざと語られている。

 ⑧さるは、おはせし世には、なかなか、かかるたぐひの人しも、尋ねたまふべきにしもあらずかし。わが過ちにて失ひつるもいとほし、、、
  →語り手の評言。薫の罪の意識のなせるわざ。身分社会は人の心を翻弄する。

本段はさらりと通過していいところでしょう。

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蜻蛉(8) 薫、中将の君に手紙 への3件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    薫は何ごともよく気がつき用意周到ですがすべてが体面に重きを置いている気がします。
    世間からどう思われるだろうとか・・・

    中将を見舞い後援を引き受けるも今となっては全て詮無きこと。
    しかし浮舟の死を悼む薫の気持ちに嘘偽りはなくせめてもの罪滅ぼしをと気遣う薫の気持ちは充分に伝わってくるところです。

    最後の常陸介の正直すぎる態度と語り手の冷静で皮肉っぽい言葉が対照的ですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.動転して何が何だか分からないままに宇治から三条小家に帰った中将の君、ちょっと落ち着いてみると何で浮舟は入水してしまったのか、何で自分は浮舟を救ってやれなかったのか。自責と後悔で胸が張り裂けそうだったことでしょう。でもそんな中で臨月にあった娘は無事出産。つくづく世の無常を感じてたのだと思います。

      2.中将の君への口上につけての薫の心内

        げにことなることなきゆかり睦びにぞあるべけれど、、、
        わがもてなしの、それに穢るべくありそめたらばこそあらめ、、、

        おっしゃる通り何につけ先ずは世間体が気になってますねぇ。劣等感からでしょうね。浮舟が好きで愛おしく思うのなら世間が何と思おうと意に介さず突っ走るべきであろうに。。
        →そこまでやらなくても世間体(表の世界)を立てながら浮舟とうまくやる道もあったのではと思うのですがいかがでしょう。

      3.最後の常陸介の喜びと悲しみも複雑ですねぇ。
       分析して考えれば介にとっては今の状態(浮舟が亡くなり薫が見返りに遺族を後援してくれる)が一番ハッピーでしょう。介にとって浮舟は薫との伝手をつけるためにだけ存在価値があったということでしょう。あのまま浮舟と少将が結婚してたら薫との縁などできず介は浮舟を憎み続けたのでしょうから。人の心は浅ましいものであります。

      (体調、大丈夫ですか。くれぐれも無理なさいませんように)

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