蜻蛉(12) 薫、女二の宮に飽き足らず

p90-93
12.薫、女一の宮と女二の宮を比べて嘆く
 〈p194 その翌朝、御一緒に寝んでいらっしゃった女二の宮の〉

 ①@薫が正室女二の宮と住んでいる三条宮
  
 ②つとめて、起きたまへる女宮の御容貌いとをかしげなめるは、これよりかならずまさるべきことかは、と見えながら、さらに似たまはずこそありけれ、、
  →女の優劣は全て身分で決まる。同じ姉妹であるが母の出自は女一の宮の方が勝る(何せ明石の中宮である)。
  →見る目でなく感じる心が優劣を決める。

 ③薫「いと暑しや。これより薄き御衣奉れ。女は例ならぬもの着たるこそ、時々につけてをかしけれ」
  →おしゃれ、ファッションとはそう言うことであろう。でもこの場合薫の心は薄汚い。
  →女二の宮に昨日の女一の宮と同じ恰好をさせようとする。やや変態趣味ではないか。

 ④手づから着せたてまつりたまふ。御袴も昨日の同じく紅なり。御髪の多さ、裾などは劣りたまはねど、なほさまざまなるにや、似るべくもあらず。
  →白い薄物に紅の袴。鮮やかである。どうせならお付の女房に黄色の生絹を着せればよかったのに。
  →「似るべくにもあらず」そんなこと初めから分かってたろうに。

 ⑤薫「一品の宮に、御文は奉りたまふや
  →姉妹の間柄、気兼ねなく消息し合えばよかろう。その通りなのだが薫の真意は別の所にある。
  
 ⑥本段末の薫と女二の宮の会話。 
  →薫には女二の宮への愛情が全く感じられない。
  →薫にとって女二の宮は落葉の宮であろうか。

   正室女二の宮を落葉の宮として貶め女三の宮に憧れる柏木
   正室女二の宮には心を通わせず女一の宮に憧れる薫

  因果は廻るということだろうか。
  浮舟の話をここで終えて、薫が女一の宮に絡んでいく、、、なんてストーリーも構想としてはあったのかも知れない。

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蜻蛉(12) 薫、女二の宮に飽き足らず への6件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    女一の宮に真似ては女二の宮が劣ると嘆く薫、一体何を求めているのでしょうか?
    おっしゃる通り私も悪趣味の変態思考ではないかと勘繰りました。

    やはりここでも実父柏木が女二の宮を貶め女三の宮に懸想した姿が重ねられます。
    違うのは柏木のような実行力が薫にはないと言う事です。

    高嶺の花に憧れないものねだりをする薫は譬え手に入ったとしても又次の目標に移り際限なく続くとしか思えません。
    満足すると言う事を知らない哀しい男の姿です。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      この段階(K27年)での薫の女性たちをまとめると、
       
       正妻として女二の宮(1年半前に結婚)
       召人として小宰相の君他(けっこう多かったのでは?)
       亡くした愛人として大君&浮舟
       憧れの女性として女一の宮

      薫、既に27才。一体何をフラフラしてるのでしょう。人間的にもっとしっかりしていてよさそうなものですが。

      27才と言えば源氏は色々あって須磨から明石へ移っている年(京には最愛の紫の上が既にいるし後継ぎの夕霧は6才になっている)。夕霧は18才で雲居雁と結婚、27才時点では子だくさんの家庭を作っている(その後女二の宮と結婚するのは夕霧29才の時だが)。

      一方柏木が女三の宮を垣間見たのが25才で女三の宮と密通したのが31才。その間に女二の宮(落葉の宮)と結婚している。27才時点では落葉の宮を得ながら女三の宮に想いを寄せているところだろうか。

       →柏木と薫、何でこんなに似てるんでしょう。

  2. 式部 のコメント:

     薫という人物を通して紫式部は読者に何を訴えたかったのでしょうか?
     常に満たされず、求めてやまない心の飢餓感など、仏教の教えでは地獄だとされていたように思いますが・・
     仏道にのめりこんでいるはずの薫とぴったりこないのです。
     紫式部がもっと長生きして続編を書いていたとしたら、どんな展開になっていたでしょうね?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      宇治十帖(取分け薫)で紫式部は何を訴えたかったのでしょうかねぇ。
      何ともスッキリしない展開なので読者も戸惑ってしまいますよね。

      全くの当てずっぽうですが第一部で光源氏のスーパーヒーロー振りをこれでもかと書いてさすがに「やっぱりこれはおとぎ話だわ」と気づき、同じような臣下の薫を主人公に今度は現実に迫ろうと考えたのではないでしょうか。

      そして現実に即し書き始めてみる人の心は妄想・右往左往・優柔不断・後悔・反省の繰り返し。すっきりした展開になりようがない。「男ってつまんなくてお話にならないわ」紫式部は広げた風呂敷を閉じられず往生しているのかも知れません。

  3. 青黄の宮 のコメント:

    清々爺さん、薫を男性一般の代表にして、「男ってつまらなくてお話にならない」と決め付けるのはちょっと極端に走りすぎではないでしょうか。男の中には、匂宮のように天真爛漫で情熱的、行動力に溢れ、女性には優しい男もいますよ。

    宇治十帖以前に遡れば、光源氏は別格として、明石の入道、頭の中将、惟光、良清に加えて、桐壺帝、左大臣、髭黒の大将なども、それぞれに魅力的な性格のナイスパーソンであったと思います。

    薫の性格はこうした人々とは正反対で、優柔不断で諦めが悪く、常に欲求不満を抱えているタイプですが、これは柏木の遺伝子や不幸な出生の秘密のせいなのでしょう。

    式部さんの「薫という人物を通して紫式部は読者に何を訴えたかったのか?」という質問は難問ですが、極めて皮相的な回答として「薫のように富も位もある上に、見栄えが良くて礼儀正しく、しかも律儀という一見非の打ち所のない人物でも、内心は暗くて歪んでいる場合があるので、十分にお気をつけあれ」という婿探し中の女君やその親御方に対する警告であるというのはどうでしょうか(笑)。

    • 清々爺 のコメント:

      鋭い突っこみありがとうございます。

      おっしゃる通り薫を男性一般の代表にしてはいけませんよね。反省しています。これも不幸な出生の秘密を持ち劣等感に苛まれる薫を熱烈に応援してきたのに一向に期待に応えてくれない。そんな薫に八つ当たりしている感じですかね。(巨人フアンには中日フアンの気持ちは分からないようなものでしょうか)

      それにしても光源氏がいた時の源氏物語と宇治十帖ではトーンが全く違いますねぇ。むしろ対照的かもしれません。宇治十帖で紫式部は何を言いたかったのか、更に考えていきたいと思っています。

       →「こんな男にお気をつけあれ」ですか。成程、面白い。「そんなの簡単よ。私ならちゃんとした男にしてみせるわ」っていう剛毅なお姫さまもいるかも知れませんが。。

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