人物談義(9) 明石の君・明石の入道・明石の尼君・明石の女御

【明石一族】まとめて考えてみました。
 ①明石の入道=評価:良 好き嫌い度:好き 尼君=評価:良 好き嫌い度:大好き
 明石の君=評価:優 好き嫌い度:好き 姫君(中宮)=評価:良 好き嫌い度:好き
  →明石一族、好きです。素晴らしい。これも入道の徳のいたすところでしょう。

  明石の入道 歌5首 代表
   ひとり寝は君も知りぬやつれづれと思ひあかしのうらさびしさを(明石)
  明石の尼君 歌7首 代表
   身をかへてひとりかへれる山里に聞きしに似たる松風ぞ吹く(松風)
  明石の君 歌22首 代表
   年月をまつにひかれて経る人にけふ鶯の初音きかせよ(初音)
  明石の姫君 歌4首 代表
   秋風にしばしとまらぬつゆの世をたれか草葉のうへとのみ見ん(御法)

 ②明石の入道、この人物設定が実にいい。大臣家の出自ながら宮仕えに気がそまず播磨守に成り下がりそこで再起を期す。桐壷更衣のいとこ。桐壷更衣の果たせなかった夢(子孫を皇位につける)を明石の姫君が東宮を生むことで果す。住吉大社が一族の守り神社。

  清廉潔白・高貴朴訥・高潔 爽やかなイメージの男である。あくどい受領の面影はない。
  ・尼君、明石の君、姫君と別れ播磨に残るシーン(松風)
  ・姫君が天子の子を産んだと聞き願いが叶ったとして山に身を隠すシーン(若菜上)
  →涙ながらのシーンでした。ここは入道大好きな式部さんに語ってもらいましょう。

 ③明石の尼君 家族思いの素晴らしいお母さん、お婆さん。頑固一徹の入道をうまくコントロールしバランスがとれた考えの持ち主。幸せ者の典型と目され近江の君がいい賽の目と出そうと「明石の尼君、明石の尼君」と唱えるところが面白い(若菜下)。

 ④明石の君 優れた人、賢い人、控え目な人、したたかな人
  出自的には源氏の妻にはなれない、召人扱いが精々。源氏が言い寄るのに躊躇したのも当然だろう。ところがうまく立ち振る舞い源氏を自邸に来させることに成功し、しかも娘が生まれる。これが大きい。
  →六条御息所に似ていると源氏に感じさせた明石の君、田舎にいながら教養抜群で源氏に一目おかせるような人物であったのだろう。
  →六条院に入っても紫の上を立て分を弁えひたすら姫君の幸せを考え行動した賢さには頭が下がります。一番頭がよかった女性は明石の君ではないでしょうか。

 ⑤明石の姫君(中宮) 女御として中宮としてバランスのとれたしっかりした人物
  養母紫の上を慕い最後まで礼を尽した。 
  →紫の上臨終の場面、中宮に手をとられて身罷るシーンは印象的でした。

  宇治十帖でも夕霧とともに重要な脇役として登場。
  (明石の中宮=匂宮の母、薫の異母姉)

明石一族の明石物語、まともな人たちによるまともなサクセスストーリーで源氏物語を盛り立ててくれたと思っています。

(月~水 会津~裏磐梯に行ってきます。「八重の紅葉」です。返信遅れます。ご容赦ください)

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人物談義(9) 明石の君・明石の入道・明石の尼君・明石の女御 への6件のフィードバック

  1. 青玉 のコメント:

    明石一族、みんなよく出来た人物で大好きです。

    特に入道、この人は格別。頑固、変人と言われようと入道あっての明石一族です。
    入道の犠牲の上に成り立った明石一族の繁栄でありながら入道は決して不幸ではなかったと思います。むしろ幸せ者と言ってよいでしょう。
    住吉明神への願掛けを実現させ娘を源氏にその孫娘を中宮にまで昇り詰めるさせる名脇役。
    妻、娘、孫を京へ送り出す「松風」そして「若菜上」での遺言とも思える長い手紙、。
    涙なくしては読めない場面でした。
    今でもありありと哀切極まりなく浮かぶ名場面です。

    そして特筆すべきは明石の君。
    源氏唯一の姫君を儲けたことが大きい。
    掌中の珠、姫君を紫の上に託し控え目で辛抱強く聡明な女性。
    しかも琵琶の名手。教養共に申し分ない、女の鏡とも言えましょう。

    尼君、このおおらかな包み込むような温かさは一家の支えであり繁栄の影の力。
    とにかく明石一族は源氏物語中、幸福の象徴です。
    その幸福の裏には涙を絞る親子の別れ、忍耐が横たわっており幸福という形で報われたことに救われる思いです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      以前から明石の君がお好きとおっしゃってましたもんね。受領階級の聡明な娘が貴人に嫁いで娘を生みその娘が入内して中宮になり天子を生む。いつも書いてますが儀同三司母&中宮定子を思い出します(定子の子は天皇にはなれなかったが)。

      紫式部も受領階級の聡明な娘であり一つ間違っていたら明石の君になる可能性だってあった筈。ただ父為時が今ひとつパッとせず二流貴族藤原宣孝の後妻になるのが精々であった。。。紫式部も「ああ、我が父も明石の入道みたいだったらよかったのに、、、」と思いながら書いていたのじゃないでしょうか。

  2. 式部 のコメント:

    私は明石入道が大好きです。入道の美点は清々爺がしっかり書いてくれたので言うことなしです。
    この一族は「チーム明石」だと考えています。
    はっきりした目的をもつ監督はもちろん明石入道、それを助ける名コーチは尼君、その大きな夢を実現できる能力をもつプレーヤーは明石君、姫君です。
    夢のような入道の願望に家族が心を合わせて協力、努力する姿は読んでいて好感がもてます。
    明石入道は自身の栄耀栄華を求めたり、それを享受することはないのです。ここが良いのです。
    身の処し方、引き際は心に強く残り、いつまでも消えません。
    源氏物語の中で明石家族の結びつきは素晴らしく、みんな好きです。

    • 清々爺 のコメント:

      入道大好き、式部さんらしいコメント、ありがとうございます。

      「チーム明石」ですか。分かり易い素晴らしい表現ですね。一族・家族とはかくありたいとつくづく思います。明石の入道の美点を一つだけあげるとすればおっしゃる通り「身の処し方」でしょうね。一族の繁栄を願い挙って奮闘努力邁進する。。。それはできるとしても事が成就した暁にはその栄華に浴したいと思うのが人情でしょうに、逆に一切を捨てて山に籠ってしまう。常人にはこれはできません。老醜をさらす御仁の多い中色々考えさせられます。
       →私なんぞそんな望みは高くないので山に籠るなんてしませんけどね。

      追伸: 「チーム明石」のアドバイザーというかアシスタントとして「宣旨の娘」を加えたいと思うのですがいかがでしょう。この乳母は明石の君・姫君母娘にとって多大な貢献をしたと思います。田舎育ちの一家が貴人に磨き上げられたのはこの人のお蔭でしょう。

  3. 青黄の宮 のコメント:

    明石一族の4人に対する小生の評価も高いし、4人とも大好きないし好きです。明石一族を褒め称える皆さまのコメントはそれぞれ尤もで、これ以上、付け加えることもありません。

    明石一族が何故あんなにも成功を収め、幸福な一族となれたか。その理由を小生なりに考えると、第1にリーダーである明石入道が大きな夢を抱き、住吉明神を信じて、全くブレずにその夢の実現のため着々と手を打ったこと、第2に式部さんが指摘されているように「チーム明石」として、それぞれが自分の役割をきちんと果たし、絶妙なチームワークを発揮したこと、第3に、明石入道が願いが叶ったと知ると山に隠棲したり、明石の君が姫君の養育を紫の上に託するなど、私欲にない潔い態度を取れるメンバーばかりであったこと、等です。

    でもやはり、受領時代に巨額の富を蓄えたことも大きな理由で、それを有効に使ったからこそ、夢を実現できたとも思いますよ。

    • 清々爺 のコメント:

      明石一族成功の分析、ありがとうございます。その通りだと思います。

      「地頭は倒れるところに土をつかむ」明石の入道の蓄財術も相当なものだったのでしょうね。浜の館と岡辺の宿、贅を尽くした都風の大邸宅。やはり財力あっての成功譚でしょう。

      明石の君を京へやるに当たり大堰に尼君縁故の土地があるとてその土地の宿守と明石の入道が対話するところが面白かった(松風2)。「この土地はオレがずっと任されてきたもので、、、」と明け渡しを渋る宿守。強欲なヤツめと思いつつ脅しと懐柔をまぜながらとりなす入道。受領として巨万を築きあげたであろう入道の呼吸を見た思いでした。

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